あきた版5月3週号
良質な酒米作りへ 亀の尾原料に日本酒醸造 - ㈱a.base
農作物の生産や加工、販売を行う横手市平鹿町の株式会社a.base(エーベース)は、今年から新たな試みとして「あきたこまち」のどぶろくと「亀の尾」の日本酒製造に取り組む。来年1月の酒の完成に向け、良品質な米の栽培に注力している。
同社は森谷友樹代表取締役(30)が2020年に設立。前職は銀行員だったが、地元酒造会社で杜とう氏じとして活躍し、農業を営んでいた父の死をきっかけに就農した。森谷代表は「自社栽培した酒米で日本酒を造ることを目標にした」と振り返る。
あきたこまち18㌶や亀の尾75㌃などを栽培。亀の尾は21年から作付けている。「初めて見た時に、稲穂の美しさがほかとは全く違う
ことが衝撃的で、脳裏に焼き付き忘れられなかった」と森谷代表。「コシヒカリ」や「ササニシキ」などの原種ともいわれるルーツや希少性にも引かれ、10㌃で栽培を始めた。
亀の尾は他品種と比べて草丈が長く、倒伏が起きやすいため、収穫に多くの労力を費やすという。倒伏の対策として、育苗の段階から草丈を抑制させるため、露地プールで育苗。排水条件の良い圃場を選定して作付け、特別栽培米基準の管理を徹底する。
また、草丈は長いものの、穂はまばらで、森谷代表によると、10㌃当たり収量は6俵(360㌔)、7俵(420㌔)と少ないという。昨年は天候不順で360㌔だった。「収量が少ない品種のため、肥料設計に気を使っている。今年は栽培面積を増やす予定だ」と話す。
どぶろくは自社製造で、日本酒は市内酒造会社に委託。同社のオンラインショップや運営する飲食店「地酒もっきりマルキュウ」で販売予定だ。
森谷代表の父の元同僚で、同社設立に携わった農業・醸造部門の鈴木清吾取締役(60)は「農業経営方針を聞き、これからも酒造りに携われると思って賛同した。経営は優秀な森谷さんに全て任せている」と評価する。
現在は雇用と収入確保のため、飼料米8・8㌶やスイカ60㌃、キクイモ30㌃なども栽培しているが、今後は酒米栽培専業での経営を検討している。「酒米だけでの経営には面積拡大と人材育成が課題。積極的な設備投資に取り組み、地域の方々に頼られる存在になりたい」と意気込む。
次号をお楽しみに!