農業共済新聞

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2022年3月3週号 
シャインマスカット 盛土式根圏制御栽培法 - JA秋田しんせい
 由利本荘市とにかほ市を区域とするJA秋田しんせいは、新たな果樹特産品としてブドウ「シャインマスカット」の生産拡大に取り組み、「盛土式根圏制御栽培法」を推奨する。5年後には栽培面積165㌃を見込む。生産拡大に向けた担い手育成が急務のため、研修用ハウスを整備。地域一体で管理技術の習得と向上を図っている。

 研修用ハウスは由利本荘市と同JAが連携して、同市館の旧石沢中学校グランドに設置した。電子制御システムや水道設備が整ったハウスで、広さは約4・9㌃(約150坪)。整備費は約900万円で、同市が半額を補助する。
 県内2例目となる盛土式根圏制御栽培法を導入した。遮根シートで地面と隔離した盛り土に苗木を定植。敷設した灌かん水すいチューブから樹体の成長に合った水分量や養液を管理システムで供給する。
 生育時期ごとに1日の必要量を十数回に分けて点滴灌水が可能だ。培地が盛り土で最適な水分を管理できるため、湿害の心配がなく、樹勢を制御できる。
 同JA営農経済部園芸販売課の山野寛子さんは「この栽培法は作業の効率化・軽労化が図れる。収穫開始までの時短と高品質・多収が可能で、ハウス栽培のため農薬使用が控えられるのがメリット」と話す。今年は4経営体がシャインマスカットの盛土式根圏制御栽培法で取り組む予定となっている。
 ハウス内に機器の設置スペースを確保するため、48本ほどの栽培本数だが、2棟目以降は同じシステムを延長させ、52本ほど栽培できる。縦に2列、2・4㍍間隔で樹き を配置。3本主枝のオールバック樹形にする。高さを抑え、主枝を上下2段に仕立てる。上段は立って、下段は椅子に座っての作業が可能だ。
 樹形が直線に並ぶため、作業動線が一直線となり、時間短縮と移動負担の軽減につながる。車椅子での作業が可能なため、福祉関係者から就労分野で採用できないか興味を持たれているという。
 推奨栽培の機器がそろえば、露地でも取り組める。慣行栽培で3年目に収穫できるものが、2年目から収穫可能となり、同JAでは将来的な収穫量を慣行栽培の1・5倍ほどと予測する。
 研修生の伊藤舞子さん(36)は「旅行先で初めて食べたシャインマスカットがおいしく、自分で栽培したいと思った。勉強すればするほど難しさを感じているが、新しいことにチャレンジする充実感の方が強いです。まだまだ準備段階で2023年度の定植を目標に頑張る」と意気込む。
 山野さんは「シャインマスカットは人気の高い品目。研修ハウスの整備で県内外から新規就農者が増え、将来的に集客効果が見込めることを期待している」と話す。
次号をお楽しみに!