2022年11月2週号
雪中貯蔵の大吟醸 - 株式会社北鹿
大館市有浦にある株式会社北鹿(岩谷正人執行役員社長、63歳)は、1944年から続く市内大手の酒造会社だ。90年からは生原酒が入った貯蔵タンクを雪中に埋める熟成方法を導入。雪の中で熟成された大吟醸「雪中貯蔵」は、まろやかな味わいを楽しめると評判だ。
雪中貯蔵は温度が一定に保たれることで、ゆっくりと熟成できるのが特徴。搾りたての荒々しさから角が取れ、優しく透明感のある飲み口になるという。
同社では十和田湖畔に貯蔵タンク6個を設置。高さと直径が2㍍のドーム型で、1個当たり1万㍑入る。かまくらを作るように4㍍の高さまで雪を積み上げて覆い、2カ月間熟成を行う。製造第一部門リーダーの齋藤保穂さん(45)は「機械で温度を管理すると、温度1度の振れ幅を調整することになるので難しい。雪中だと安定して0度を保ちながら熟成できる」と話す。
大吟醸の原料には、心白の大きい「山田錦」を使用。雑味を減らすため、精米歩合を50%としている。「酒母だけ、こうじだけが良くても良い酒にならない。私たちは主役の米が酒に変化するのを手助けしているに過ぎない」と米の重要性を強調する。また、酒は気温や水の微妙な変化で味が変わるため、状態に応じた細かい調整に気を配っているという。
取り扱っている商品のほとんどは、消費者の声を反映させて改良を重ねてきた。「意見をもらえるのは期待されているからこそ。どんな意見も糧になる。改良しながら長年愛され、今も残っている商品には感謝しかない」と笑顔を見せる。
また、消費者の声を基に、人や場面に応じて酒を選択できるよう商品の種類を充実。高価な印象の商品を日常的に楽しめるように親しみやすく改良したり、冠婚葬祭用を製造したりしている。
現在、人材育成に力を注ぐ同社。地元で働く意欲のある人を採用している。齋藤さんは「数年でこの仕事を覚えるのは容易ではない。仕事と酒の良さを知り、好きになってもらいたい」と期待する。
次号をお楽しみに!