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あきた版8月3週号
「綴子のセリ」伝統をつなぐ - 北秋田市が承継支援事業

 北秋田市は、事業者の承継課題を支援するため、2022年10月にインターネット上で「北秋田市継業バンク」を開設した。後継者不在の事業者情報を公開し、全国から担い手を募る。運用開始後、工芸と農業分野で事業承継が成立。取り組みに成果が表れている。
 継業バンクは、ココホレジャパン株式会社(岡山市)が提供する事業承継のマッチングサービス。移住・継業を考える全国約3150人が登録する。北秋田市は同社と提携し、専用プラットフォームを開設。全県に先駆けて自治体関与型の承継支援事業に取り組んでいる。
 同事業を立ち上げた北秋田市産業部産業政策課の千葉祐幸さんは「地域で親しまれた飲食店など老舗の廃業が続いた。後継者を求める人が元気なうちに技術を伝え、伝統をつなぐ取り組みが必要だった」と話す。染織物「秋田八丈」の後継者募集を皮切りに、伝統が途絶えつつある事業の掘り起こしを行ったという。
 同市綴子田子ケ沢は、特産「綴子のセリ」栽培が40年以上続く地域だが、20戸以上いた生産者は離農などで2戸に減少。24㌃で栽培を続ける斎藤光
幸さん(74)は「セリの伝統が途絶えるのは残念だが、後継者がいない以上はやむを得ないと思っていた」と振り返る。
 同市が働きかけて、継業バンクに情報を掲載すると問い合わせがあり、長野県生坂村から尾形清さん(68)、亜希子さん(41)夫妻が2度の現地体験に訪れた後、今年4月に移住。セリ栽培を継いだ。
 移住して農業を始めたいと考えていたという亜希子さん。「情報を集めていた際、斎藤さんの記事を見た。大館市出身の私にとって、セリはきりたんぽ鍋に欠かせない愛着のある食材。伝統をつなごうと、夫と継業を決めた」と話す。綴子のセリと認められる高品質のセリを作ることが目標だという。
 斎藤さんは「意欲がある2人に継いでもらい、安堵した。良いセリができるように栽培技術を伝えていきたい」とほほ笑む。
 同市は本年度中に、都内で継業PRイベントを3度行う予定。千葉さんは「現在は市単独の承継支援事業だが、近隣自治体との広域的な取り組みにできないか模索していきたい」と話す。
次号をお楽しみに!