2020年8月1週号 獣害に打ち勝つ③
「クマが避ける木製のくい」開発 - ウッディさんない
横手市山内土渕の木材加工会社「ウッディさんない」は、秋田県立大学木材高度加工研究所と作業を分担し、「クマが避ける木製のくい」を開発した。
くいは杉の間伐材の丸太で、長さ1・5㍍から2㍍。トウガラシに含まれる成分「カプサイシン」などの混合液を染み込ませた木栓が埋め込まれている。山林や畑に設置すると、嗅覚に優れ、学習能力が高いクマは、嫌いなにおいがすることを覚えて近寄らなくなる。効果は2年ほどで、木栓をくいから外して打ち直しできる。また、木栓に穴を開けてロープに通し、つるして設置することも可能だ。
同社の熊谷誠喜顧問(80)らは、ツキノワグマによる農作物や人への被害に多く触れるうちに、間伐材を使って対策できないかと考え、同研究所の野田龍准教授に相談。北秋田市のくまくま園を一緒に訪ね、「クマはオオカミの尿やトウガラシが苦手で避ける」というヒントを得た。2018年、あきた農商工応援ファンドに計画を応募したところ採択され、資金面での助成も得てクマが避ける木製のくいの開発がスタートした。
くいは秋田市大森山動物園で飼育するツキノワグマに試して観察し、横手市内の果樹園や仙北市田沢湖の山林にも設置して検証実験を繰り返してきた。実験に園地を提供したのは、横手市山内の小林良一さん(79)。「昨年、夏にクマの食害があったリンゴ園地に、くいでできた柵を10月下旬に設置した。一緒に付けた監視カメラでクマが園地に来たのを確認したが、柵のにおいを嗅いで何もせずいなくなった。以降、園地にこなくなった」と効果を実感している。
熊谷顧問は「さらに実験を重ね、クマが忌避する効果をグレードアップさせたい」と意気込む。同社の高橋嘉男専務取締役(66)は「カプサイシンは自然由来の成分なので、他の動植物に影響はなく、クマの健康にも害はない。くいでできた柵がクマと人をすみ分けするための境になれば」と話す。
同社では、来年以降の商品化を目指し、間伐材の有効利用にもつなげたいとしている。
次号をお楽しみに!