2021年11月3週号
リンゴ 楽しみながら技術向上へ - 菅雄樹さん
菅雄樹さん(62)は湯沢市秋ノ宮地区でリンゴ190㌃とオウトウ30㌃を栽培する果樹農家。果樹栽培を営む両親の下で、物心がついた頃からリンゴ作りに携わり、農業に従事してきた。果実や枝葉、病害など細かな確認を日々欠かさず、技術向上を目標に、作業を楽しみつつ、高品質な果実を生産している。
「1月中旬からおいしいリンゴが実る姿を想像して、樹形の整えと枝の剪定のため、樹体にのこぎりを入れた。その瞬間は心地よく、楽しさも感じた。気持ちを込め刃を入れた。期待通りの出来でホッとしている」。リンゴの収穫最盛期を迎える中、菅さんは安堵の表情を見せる。
おいしい果実を実らせる良質な花芽と葉を作る技術の向上を目的に結成した「リンゴの木に良い花を咲かせる会」の代表を務める菅さん。県内の若手果樹農家13人と技術の研鑽を積み、栽培に情熱を注ぐ。
転機となったのが2012年の記録的な豪雪。雪害対策は講じていたものの、園地の雪解けが進むにつれ、幹裂けや枝折れなど被害が見え始め「どう再生するか悩んでいた」と振り返る。
師事する山形県東根市のリンゴ農家・清野忠さんに相談したところ、雪害を受けた経験を聞き、「皮一枚でもつながっていれば、木を上げてつなげた方がいい」と背中を押された。
清野さんは剪定方法の改善で高品質なリンゴ栽培を実践しているため、力強いアドバイスになったという。
「雪を受け入れ、痛々しくも歴史を刻み、乗り越えた木に実らせよう。可能な限り樹体の再生と剪定や葉の生かし方などに、より一層注力した」と話す。
雪害対策として、枝の支柱を2本クロスさせ固定し補強。支柱は動かず被害が軽減した。「単純なことだが手間は倍かかる。だが収穫できなければ元も子もない。皮がつながっていれば、再生できる」と話す。
菅さんは県の指導農業士として各種講習指導やフロンティア研修生を受け入れ、後進の育成に努める。関係のある団体などと交流し、近県の鍛冶師や馬具職人に栽培で使う道具を特別注文する。「はさみやのこぎり、収納するベルトケースなどは長年使用する。性能や見た目の格好よさを含め、愛用する道具でも果樹を楽しむ」とほほ笑む。
リンゴは贈答用として販売するほか、直売所「菜菜こまち」(道の駅おがちに併設)に出荷。菜菜こまちの販売員は「ほかのリンゴより蜜がたっぷりで自然な味わい。自信をもってお薦めしています」と評価する。固定客が多く、度々品切れになるという。
菅さんは「果樹経営を取り巻く環境は厳しい。向上心と探求心を大切に、楽しさを織り交ぜて仲間と共においしい果樹を消費者へ届け続けたい」と前を向く。
次号をお楽しみに!