「米の消費量が年々減少していく中、おいしくて消費者に求められる米作りを追求している」と話す湯沢市弁天地区の渡部浩見さん(58)。農薬や化学肥料に頼らず、堆肥や漢方薬で使われる生薬などを施用した土壌で水稲13㌶を栽培する。安全・安心で食味の良い米が評価され、コンクールで複数回受賞するほか、消費者からも好評を得ている。
栽培を始めて40年。「あきたこまち」や「金のいぶき」「ゆうだい21」など数品種を手掛ける。土作りに力を入れ、慣行栽培よりも農薬と化学肥料を抑制。使用量が県の標準基準の半分以下となる米が対象の「特別栽培米」に認証されている。
春の耕起時に堆肥を散布。ケイ酸資材を10㌃当たり通常の2倍入れる。加えて「漢方農法」を取り入れ、漢方薬で使われるオウバクやニンニクなどのエキスを含んだ生薬を施すという。「床土混和することで、育苗期の虫よけや初期生育向上の効果を実感している。出穂後に3回ほど散布し、病害虫などに強い株作りを目指している」と話す。
水田環境鑑定士や調理炊飯鑑定士の資格を持つ渡部さんは、環境や食育について考えながら米作りに取り組む。渡部さんの米を毎年買うという女性は「おにぎりにして食べたが、やっぱりおいしい。渡部さんのお米は安心して食べられる」と話す。
工夫を凝らして栽培した米が評価され、食味を競う「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」では、2015年産の金のいぶきと19年産のあきたこまちが都道府県代表お米選手権部門で金賞を受賞。あきたこまちは特別優秀賞を2回受賞している。さらに昨年、ゆうだい21を出品し、3度目の金賞に輝いた。
7年ほど前、千葉県の知り合いから「『コシヒカリ』に代わるとてもおいしい品種がある」と勧められて栽培を始めたのがゆうだい21。栃木県の宇都宮大学が育成した品種だ。秋田の気候に合わず、収穫は難しいとされていたが、20㌃分の種もみを注文して挑戦した。
「1年目は9月に入ってからの出穗だったため心配したが、10㌃当たり約330㌔の収穫となった。驚きのおいしさだったことを覚えている」と振り返る。試行を重ね、やっと納得のいく米を近年栽培できるようになったという。
「地域の方々と家族のおかげで、これまで頑張れた。これからもおいしい米作りを追求したい」と意気込む。米はホームページ「ひろみちゃんちのお米」で販売している。