由利本荘市の矢島・鳥海地域に江戸時代から伝わる松皮餅。アカマツの樹皮を餅に練り込み、あんこを包んだ控えめな甘さが特徴の大福餅だ。
樹皮は、内側の繊維だけをはぎ取って使う。軟らかくなるまで、あくを取りながら煮込み、細かくつぶして餅に加えている。
「手づくりの店Pao・ぱお」の佐藤くみさん(71)は、矢島地域で2010年ごろから松皮餅を製造。材料のもち米栽培や松皮の採取、加工所経営を夫婦で行う。
佐藤さんは「納得する松皮餅ができるまで10年かかった。もち米から作るので硬くなりやすく、軟らかさを出すのに苦労した」と振り返る。添加物を使わずに軟らかく仕上げるため、工夫を凝らしたという。
同地域の直売所「やさい王国」やイオンスーパーセンター本荘店などで販売。多い時は500個製造することもある人気商品だが、現在同地域の作り手は佐藤さん夫妻だけだ。「受け継いでくれる人がいたらうれしいが、今は夫婦で協力し、できる限り続けていきたい」と話す。